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コーヒーの大学院

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美食、甘味と並び、私にはもう一つこだわりがある。 それはコーヒーである。


事務所では原則としてコーヒーを飲まないことにしているので、あるいは私がコーヒー嫌いだと思っている人がいるかもしれないが、それは違う。

どうせロクなコーヒーを飲むことができないと思っているから、事務所では飲まないのだけなのだ。


気に入った豆屋で気に入った豆を買い、その豆を自分の手で挽き、その時の気分や時間に応じてパーコレーター、ペーパーフィルタ、サイフォン、ネルドリップのいずれかで飲む。

鮮度を落とさぬうちに賞味するために、豆を買うのは原則として100g単位。 毎日飲めば数日で使い切ってしまうため、ほとんど毎週豆を買いに行かねばならない。

手間もかかるし面倒ではあるが、全ては美味いコーヒーを飲むために必要なのである。

コーヒーに限らないと思うが、手間暇かけたものほど美味いのである。


このシリーズでは、私が訪ねた喫茶店とそこで賞味できるコーヒーを紹介しようと思う。

ただ最近、特にここ20年くらいの間に、喫茶店と呼べる店がめっきり減ってしまった。

新シリーズを始めたところで、どこまでできるか一抹の不安はあるが、そんな状況下だからこそ、探索することに価値があるとも思えるのだ。


さぁ、前置きはそれくらいにして、第一弾として「コーヒーの大学院」を紹介しよう。

これは専門学校やビジネス教室の類ではない、そういう名の喫茶店である。

その名が暗示するように、ここは普通の喫茶店ではない。 ここは、かつての喫茶店の集大成とも言え、またある意味では頂点とでもいえる店ではないかと思う。

「『香り高い一杯のコーヒーを吟味してお出しする』という理念に由来して、最高学府である「大学院」を名に冠した」と店自ら言っている。

それだけ気合が入っているのだ!

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店のドアを開けると、オリエント急行かシベリア特急の通路とも見紛うような派手な光景が目に飛び込んで来る。

そうここには、豪華絢爛、ゴージャスなどといった修飾語がよく似合う。

看板や店内のいたるところに「コーヒーの大学院」と並んで「ルミエール・ド・パリ」と書いてある。 Lumiere deParis (パリの光という意味)のことであろうが、いったいどちらが店の名なのか??

まっどちらでもいいのだが、とりあえず「コーヒーの大学院」を店名、「ルミエール・ド・パリ」をキャッチコピーとでも理解しておこう。


派手なインテリアなどから、パリの光、ゴージャスさへの憧れが、店内のいたるところから感じられる。

やり過ぎと感じられなくもないが、かつては多くの喫茶店でこうした光景が見られたことを考えれば、今となっては貴重ともいえるだけに、まぁいいとしよう。

ところどころに「光ナキ人ニ光ヲ」と書かれている。 こりゃ何だ!?

まさか新興宗教でもあるまいに・・まぁいいとしよう。

我々のように、トンネルの先に隔離されて、毎日拷問のような飯を喰わされている者にこそ光を!!


メニューには一通りのコーヒーが揃っている。 今回はスペシャル・ブラジルサントス(¥1,300)を注文してみた。

しばらくすると、まずテーブルの上にソーサーが、そしていよいよコーヒーが出来そうになると、その上にコーヒー・カップが置かれる。

こういう段取りが、いかにも美味しいコーヒーを出しますよ的な雰囲気を盛り上げる。
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テーブルには、よそのコーヒー専門店の2倍の量の豆を使っている旨書かれた紙が、これ見よがしに置いてある。

ほぉぅ、こりゃ期待できそうだ。


そしてついに、サイフォンに入ったコーヒーがやってくる。 カップに静かに注がれるコーヒー・・
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コーヒーを注いだ後で、オジサンは何やら酒のようなものをさらに注いでいる。
(スペシャルが付くコーヒーに入れてくれるようだ)
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「これは何ですか?」「フランスの最高級ワインです」「へぇー」・・最高級?・・おいおい本当かいな??

あと一杯分のコーヒーが残ったサイフォンとそのワインのボトルをテーブルの上に残して、オジサンは奥に引っ込んで行った。


え~、いいのか、最高級のワインをテーブルの上に置いたままにしておいて!?

まぁ、残ったコーヒーを飲む時にもワインを入れろということなのだろうが、そんなにいいワインなら、そのまま飲んじゃうよ~・・

そのワインをよく見ると、ラベルにChateau d'Yquem (シャトー・ディケム)と書いてある。 1990年ものだ。

後で調べたところ、それは貴腐ワインのトップ・ブランドであり、1990年ものは、なんと5万円ほどもするようだ!

そんなにいいものだったのなら、もっと多めに入れれば良かった!

コーヒーを飲んでみると・・ふむふむ、確かにコーヒーの苦味の中にも、ワインの香りと甘味が感じられる。

2杯目は、まずコーヒーだけで飲んでみる。 おぉ、ブラジルサントスの香りと苦味がちゃんと出ている! こりゃ、いいぞ!


次にカフェオレ(¥680)も飲んでみよう。
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ソーサーやカップを出すタイミングはコーヒーと同様。 今度はオバサンが入れてくれるようだ。

手を高々と(カップから50cm以上も)挙げて、コーヒーとミルクを注ぐ。 それでいて、周りに跳ねることがないのは見事である。

飲んでみると・・コーヒーとミルクの割合が絶妙ですな! こりゃ、なかなか真似できないぞ。
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ついでにロランジェ・ケーキ(¥380)も試してみた。 ごく普通のフルーツケーキでそこそこの味。 誰もが美味しいと言うと思うが、個人的にはしっとりさとジューシーさがもう少し欲しい。

いずれにしろ、コーヒーがこれほどの味なら、この店には今後も通う価値ありだ!


さっきのオジサンといい、このオバサンといい、店員は皆年配のようだ。 若いギャルもいいが、丁寧な仕草や挨拶もきっちりしている年配の人もいいね。


食器にもこだわりが見られる。

スペシャル・ブラジルサントスにはBorn China、カフェオレにはBlue Donubeが使われていた。

Born Chinaは、牛の骨灰(燐酸カルシウム)を30%以上含んでいて、18世紀頃イギリスでつくられるようになったもの。 透光性の優れた乳白色で、長い間製法が秘密にされ、当時の王室や貴族の間で珍重されていたという。

一見するとマイセンかとも思えるBlue Donubeは、マイセンと共同開発したものだそうである。 ちなみに、Blue Donubeとは「青きドナウ」という意味。

ワシの日記は、相変わらず、勉強になるのぅ!


この店には次のような4つのサービスがあるようだ。

水曜日:クイーン・サービス (シャンペンを飲ませてくれる)
金曜日:キングスペシャル・サービス (シャトー・ディケムを入れてくれる)
雨の日:レイン・サービス (ポイントをくれる)
毎月7日:ラッキー・プレゼント (世界のチョコレートをくれる)


そして、モーニングセットやランチメニュー、さらにはテイクアウトまであるというから嬉しい。

特にランチメニューには、特製手作りハンバーグ、スペシャルビーフカレー、ミートスパゲッティー、仏蘭西風エビフライなど、一部には???なものもありそうだが、懐かしい系の品が揃っている。

これらについては、いずれ mr.G に報告してもらうことにしよう。


さらに極めつけは、この店には「特別ルーム」なる部屋が存在するという。

潜入した者によると「シャンデリアを始めとした装飾品で飾られ、滝まで流れている! 秘密会談に最適」という怪しい部屋のようだ。

店側によれば「先代のオーナーが王様の気分でコーヒーを味わってもらえるようにと作った」ということだが、探求者としては、いずれ調べてみなければなるまい・・