自然薯料理 しずく亭

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美味しい蕎麦を食べようと箱根に行った。


以前は小涌園裏の別荘地区にあった筈だが・・訪れてみると見つからない。 散歩している人に聞いたところ、余所へ移転したという。

「仙石原のゴルフ場の近く」という以外に手掛かりはなかったが、同じような別荘地だろうと考え、車を進めた。

その推理は当たりで、新しい場所はそれほど迷わずに発見できた。


しかし・・昨年の台風によってそば畑がダメージを受けたそうで、残念ながら今年は蕎麦の営業をしていない由。

それでも、せっかく来たのだからと、代わりに麦とろ(¥2,500)を食べることにした。


通常の別荘の一階部分を客席として使っているため、外から見ると「ここが?」と一瞬戸惑うことになるが、それがいい。
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また広い通りから少し離れているため、外を通る車の音や観光客などの声もせず、静かな雰囲気が保たれている。

そんなわけで「店」という表現にはいささか違和感を覚える。

内部は、玄関を入ってすぐのところにある居間(座敷)に4人掛けのテーブルが5つほど、さらにその隣の和室(個室)に4人掛けのテーブルが一つ配してあるだけである。
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いずれの部屋も畳の和室に席がゆったりと配されており、また壁にメニューなどがかかっているようなこともないため、誰もが住み慣れた場所のように落ち着ける。

さらに、どの席からも、けっこうな広さのある裏庭を通して、仙石原のすすきを観ることができ、落ち着いた雰囲気とともに日常を離れた贅沢感、ゆったり感、居心地の良さを感じることができる。
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私が訪れた時は昼少し前であったためそれほど混んでおらず、運良く個室の席を利用することができた。

席に着くと、メニューと同時に店のパンフレット(これまた違和感がある・・栞とでも言うべきか・・)が目の前に置かれる。

それによれば、ここの亭主には3つの「こだわり」があるという。

一. 味へのこだわり : 作り置きは一切なし。 注文を受けてから亭主自らとろろを擂る。

二. 食器へのこだわり : 美しさと使い心地の良さを追求。 益子陶芸展で最高の賞を受賞した人の作品を使う。

三. 場所・眺望・雰囲気へのこだわり : すすき野原を望める閑静な別荘地を1年以上かけて探した。


それを読むまでもなく、その部屋に通された時点で、私は既に我が家にいるように寛ぎ、ここの料理はかなり美味いだろうと確信した。

上記の如く、注文を受けてから自然薯を擂ったり魚を焼いたりするのだから、待ち時間はけっして短くないが、自然との対話を楽しみ風情に浸る時間と考えれば苦にならない。


この地に居を構えることができれば、ワィンディングロードを駆け回ったり、温泉に浸かりながら満天の星と語り合ったりなどは日常のこととして、富士山五合目などそれこそ散歩感覚で行けるだろうに・・

そんな瞑想(迷想)に耽るうちに、料理がでてきた。
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・麦ごはん、とろろ汁 (自然薯の擂り下ろし汁) 
・薬味 (椎茸の佃煮、キャラブキ、天城の本わさび、海苔)
・香の物 (高菜)、鯵の干物(備長炭で焼いた鯵)
・自然薯のお団子とむかご入り吸い物 

※「むかご」とは自然薯のツルに生る実。

という構成。 素晴らしい、これは美味い(食べなくてもそう感じる)!


食べてみると・・ほぉ~、味はとても薄いが美味い! これが自然の味!

擂ったばかりのとろろ汁は粘りとコクがあり、それでいてクドくない。

とろろ汁と吸い物のダシはカツオだけで取ったもののようで、たぶん塩すら使われていないだろう。

麦飯にとろろをタップリかけ、薬味を振りかければ、何杯でもお代わりできる。 椎茸の佃煮、キャラブキは単品でも美味しい。

魚介類をそれほど好きでない私でも、この鯵の美味しさは分かる。 これには感激!  誰かが骨を取ってさえくれれば、いつでも食べるのだが・・

軽くよそって3杯食べてもまだとろろ汁が余っていたため「もったいない」と思い、麦飯をお代わりしてさらに1杯食べた。

しかしとろろは消化がいいから心配なし。 麦飯も健康や美容にも良い。

美味しくて健康に良い、それこそが自然の力。 素朴だが今ではそれが逆に新鮮。


このような味をリファレンスとしてしっかり身につけておきたいものである。