横浜横須賀道路を頻繁に利用する者にとっては、港南台と洋光台はなかなか都合が良い 街だと思う。 ICからそう遠くないところに銀行、郵便局、コンビニ、大型店舗(デパートやスーパー)、 薬局、クリーニング店などの各種施設が揃っているため、途中で所用を足すには最適である。 別所、朝比奈、逗子などのICが、周囲に何もない辺鄙なところであることは、皆さん 既にご存知であろう。 さらには横横の不思議な料金体系がある。 普通車だと狩場〜佐原が¥1,200であるが、 たとえば別所で途中下車することを考えると、狩場〜別所が¥200、別所〜佐原が ¥1,100となり、なぜか途中下車しなかった場合より¥100高くなる。 同様に狩場〜 朝比奈は¥600、朝比奈〜佐原は¥650であり、¥50高くなる。 途中下車して再び 乗ってもトータルの料金が変わらないICは港南台(狩場〜港南台が¥400、港南台〜 佐原が¥800)しかないのである。 港南台と洋光台へのアクセスはそれぞれ日野ICと港南台ICが最寄りとなるが、その間は それほど離れていない。 ちょうど、日野ICと港南台ICの間に港南台という街がある ような感じだ。 これを上手く利用すれば、佐原から来て港南台ICで降り(¥800)、 所用を済ませて、日野ICから乗って狩場まで(¥350)走れば、トータルで¥1,150 で済ませることもできるのである。 これがグルメ記事?と思われそうだが、要は、そのように都合の良い街に、美味しい店は ないかと以前から探していたのである。 そして今回、かなり高い評価を与えられる店をついに発見したのである。 その店は「遊膳」といい、JR根岸線の港南台駅から歩いて3〜4分のところにある。 店のすぐ近くに100円パーキングや路上にパーキング・メータが設置されたスペースが 数多くあるので、車で行くにも便利である。 ドアを開けると、そこには10席ほどのカウンターと、8人まで入れる座敷の個室が1つ しかない。 そんなこじんまりとした空間に、トーンを抑えたジャズが流れており、それだけ でホッとした気分になれる。 席について改めて店内を見回すと、カウンターに大きな生花が活けられていることにまず目が 惹かれる。 個室のテーブルの中央にも、同様に季節を演出する花が飾ってある。 この花だけでも、そうとうなコストがかかっているだろう・・たぶん¥10,000を軽く 越える筈だ・・いやもっとするだろう。 これだけしかない座席数で、花にそれだけのコスト をかけて、採算は合うのだろうか・・などと余計な詮索をしてしまう。 入り口からカウンター席の後ろを通り個室に続く通路には砂利と石が敷かれ、間接照明に よって照らされている。 狭い店内であるからカウンター席のすぐ先にあるのだが、そのよう な演出により、個室はあたかも「茶室」のような風情を醸しだしている。 店内全体もしっとりとした間接照明によって照らされ、そこかしこに落ち着いて食を楽しめ る雰囲気が演出されている。 これだけでも、オーナーの徹底した「こだわり」が感じられる。 料理も期待できそうだ。 メニューの構成は居酒屋的であるが、列挙されている品は創作料理っぽいものが多い。 「こだわりの、しかも美味しい創作料理を、手軽にお楽しみ下さい」と書いてはないが、そう 感じられる。 カウンターには日本各地の銘酒や大皿料理いくつか並んでおり、注文する前 から期待がふくらむ。 注文する品を考えながら、回りの客を観察すると、大きな声で騒ぐ者はおらず、中には一人 で寛いでいる人もいる。 一日の終わりの静かなひとときを誰もが思い思いに楽しんでいる ようである。 さて、今回注文したのは次のとおり。 - 4点盛サラダ (¥680) - 広島風焼きそば入り たこ玉 (¥580) - 海老チリ春巻き (¥580) - 豚の角煮 (¥730) - 高菜としらすのまぜまぜごはん (¥480) まずは「お通し」を食べてみる。 もやし、(茹でた)しめじ、(熱湯で油抜きした)油揚げを 少量のキムチでピリ辛に和えたもの。 「お通し」とはいえ、侮れない。 「酒、呑んじゃ おっかな〜」という気になる。 「4点盛サラダ」は「カボチャのサラダ」、「鶏のささ身とクラゲと胡瓜の和えもの」、 「タコのマリネ」、「蟹のサラダ」という構成。 カボチャのサラダには、ドライパセリが少々散らしてある。 クラッカーが2枚添えられて いるので、それに載せて食べる。 ふむふむ、カポチャ本来の甘さを活かしながら、ほのかに チーズの味が残る。 マッシュしたカボチャにマヨネーズを隠し味程度加え、さらにプロセス チーズを少し混ぜてあるようだ。 鶏のささ身とクラゲと胡瓜の和えものには、白ねぎがタップリ乗っていて、さっぱりしている。 味付けは和風のだし汁かな。 タコのマリネには、タコ、スライスした玉ねぎ、レモン、バジルが入っており、これまたさっ ぱり。 味付けはワインビネガーに塩、胡椒といったところか。   蟹のサラダは、蟹の缶詰のほぐし身にゆで卵の白身の部分だけをみじん切りにしたものとスラ イスした玉ねぎをマヨネーズで和えて、上にドライパセリを振りかけてある。 読んで字の如し の味。 下に敷いているサニーレタスと共に食べると、味が引き立つ。 「広島風焼きそば入り たこ玉」は、キャベツ、タコ、玉子、紅生姜、削り節、青海苔をお好み 焼き風に焼いたものに、マヨネーズとおたふくソース(広島風お好み焼きの定番ソース)をかけて、 ケーキカットして盛り付けてある。 誰にも懐かしい味だが「広島風」というからには、キャベツ がもっと入っていて欲しい。 「海老チリ春巻き」は、春巻きの中身がピリ辛のエビチリになったもの。 春巻きのパリパリ感、 海老のプリプリ感、チリソースのピリピリ感がほどよい和音となって口の中に広がる。 これで充分美味しいが、個人的にはもう少し辛くてもいいと思う。 紫キャベツの千切り、レタス、貝割れ大根、トマトにイタリアン・ドレッシングがかかったサラダ が添えられているので、それで口直しすれば、いくつでも食べられる。 わざわざ食べに来る人がいるという「豚の角煮」は、豚バラの角煮と角煮の煮汁で味付けした ゆで玉子に、白ネギとミツバが散らしてある。 これは、からしを付けずに、角煮本来の味を 楽しみたい。 充分に美味しいのだが、これだけ美味いと、つい欲が出てくるのがグルメたる者。 この角煮、大皿に盛り付けて、カウンターに置いてある。 それはそれで客に見せる演出として 効果があると思うが、煮汁に漬け込まれていないので、空気に触れた肉の表面が乾いてしまって いるようで、本来の肉質が落ちている気がする。 作りたては、きっとトロトロに柔らかいと思 えるだけに、残念でならない。 (それでも充分に美味しいので、くれぐれも誤解なきよう) 「高菜としらすのまぜまぜごはん」は、ご飯にちりめんジャコ、高菜、紫蘇、白胡麻、海苔、 削り節が混ぜてあるもの。 これで上手くないわけがない、花◎笑顔。 大根のぬか漬けが 2切れ添えてあるのが嬉しい。 食べながら気がついたのだが、冷酒を注文すると、店のスタッフがお酒のお猪口(ぐい呑み)を 客に選ばせている。 おぉっ、これは「茶の湯」の儀式か? なかなか粋なことをするものだ。 聞けば、オーナーは割烹出身だという。 なるほどね〜。 この演出、料理の腕、味、器や生花 へのこだわり等々、全てに納得! 茶道の「わびさび」にも通じておられるようで、いやはやさすがです。 新たに発見した店で、落ち着いて美味いモノを食して、今宵も大満足。 上記に飲み物2点を加えて、合計¥4,400也。 営業時間は夕方5時から深夜1時までというから、仕事帰りにも気軽に寄れる店として、誰にでも 推薦できる。 画像は、海老チリ春巻き(左)と豚の角煮(右)をアップ。 店構えやその他の料理についてはギャラリーを参照されたい。