この店(「とふろ」と読む)に入ると、とても懐かしい気分になる。 江戸時代頃の町並みが再現された店内は、暖かみのある暗めの間接照明とも相まって、 落ち着いて飲食ができる雰囲気を醸しだしているのだ。 「茶の湯の世界を思わせる『わび・さび』を感じてもらいたい、日本の伝統文化を伝 えていきたい」というのが、店のコンセプトらしい。 東京都内に30店、神奈川県内に7店(JR川崎、京急川崎、新横浜、本厚木、大船、 藤沢、横須賀中央)あり、その他宮城県、千葉県、埼玉県にも展開しているようである。 私が初めてこの店を知ったのは銀座一丁目店なのだが、そこは地下2階であることを 忘れさせるような広大な空間に、それはもう見事な町並みが再現されている。機会が あれば、ぜひ訪れてみられることをお薦めする。 今回取材した大船店は、雑居ビルの5階という条件もあり、銀座一丁目店には適わな いが、フロア全体を使って上記雰囲気が演出されており、そんな雰囲気の中にカウン ター席、小部屋、座敷、テーブル席など、合わせて155席が用意されている。 そういうコンセプトや雰囲気もあってか、客の年齢層はけっこう高めであり、キャピ キャピしたオネーチャン達はあまりいない。(村○さんには残念かもしれないが、その ぶん料理をたらふく食べることに専念できよう) 料理は、手作りの和を基本として、素材を活かした炭火焼き、煮物、揚げ物、おでん、 刺身、すし、そば、さらにはオリジナルの創作ものが用意されている。 季節ごとの素材を活かした揚げ物、いつ行っても食欲をそそられる炭火焼き、暑い時 には十割そばやそれをアレンジしたサラダでさっぱりと、あるいは麦とろ飯で活力を 付け、寒い時には煮物やおでん(冷たいおでんもあるが)で暖まる等々、まさに季節に 応じた和食を落ち着いて堪能できる。日本人に生まれたことを幸福に思える料理と雰 囲気がここにはある。 さてさて、飲み物で喉を潤すうちに料理がやってきた。 まずは根菜サラダ(画像左)(¥580)と名物もっちり豆腐(画像右)(¥580)だ。 むふふふふ、思わず顔がほころぶ・・・ 根菜サラダは、馬鈴薯、薩摩芋、葱、牛蒡、南瓜、蓮等を素揚げしたものにドレッシ ング(ごま、オリジナル、青じそ)をかけただけというシンプルなものであるが、新鮮 な素材の味を存分に楽しむことができる。あっさりしていて次にくる料理を選ぶこと もなく、繊維質が多いので健康にも良い。これぞ和の神髄なり。 名物もっちり豆腐はオリジナルの創作料理であり、名物と呼ばれるだけあってファン が多いようだ。ごま風味の豆腐にたぶんカマンベール・チーズを混ぜているのだろう、 その歯触り、もちもち感、味、そのどれもが驚きと歓喜をもって迎えられる。わさび を付けて食べると、その味がまたよく引き立つ。 豆腐は他にも生湯葉、吟醸豆腐、だし豆腐などのオリジナルがあり、どれも同様に ホォーッと感嘆することまちがいなし。 お次は・・いつもなら、そばや麦とろ飯を食べるのだが、今回は珍しく串焼きと鮨に 挑戦してみた。 串焼き盛り合わせ(画像左)(¥980)と穴子ロール(画像右)(¥900)。いやはや見 るからに美味そうで、食欲をそそるねぇ〜。 この日の串焼き盛り合わせは、ししとう、かわ、ねぎま、砂肝、手羽先で構成され、 それをタレまたは塩で食べる。ししとうはピリピリ辛く、鶏肉は柔らかく、砂肝は・・ じゃりじゃりして好きになれない・・味は詳しくないがきっと美味いんだろう、手羽先 は手がベトベトになるがジューシーな肉がいい。備長炭で焼いたものが美味くないわけない。 穴子ロールは見ての通り。ロールはまぁ普通かなって感じだが、新鮮な穴子にあっさり めのタレで美味ゅうございます。 腹に余裕があればダシの味が絶品の厚焼き玉子を食べたいところだったが、この日は これでリタイヤ。 以上4品と飲み物(ウーロン茶とカシス・グレープフルーツ)で¥4,300也。 雰囲気と味を考えれば充分安いと納得の大満足。 古びた、それでいて趣のある風景。 愛着のある調度品や器に囲まれる居心地のよさ。 さて今宵も酒食興じようではないか。