最近まともな食事のレポートをしていなかったので、今回は近年流行の和食ダイニング を紹介しよう。 店の名は「元町代官坂 匠 −show」と書き「しょう」と読む。 「元町代官坂」とは店のある辺りの地名からきているのであろうが、それを反映して か、意識してか、地下1階にある店に降りる階段がえらく急で、軽い調子で歩こうもの なら、転落するのではないかと思えるほどである。 ベロベロに酔った状態で行くような店ではないが、万一そういう人がいたら間違いなく 転げ落ちるであろう。 営業時間はランチが12時〜15時、ディナーが17時半〜23時半となっている。 姉妹店として「恵比寿 匠 −show−」と「横濱 和房 懐」というのがあるらしい。 急な階段を降りると、店の中央に石畳が敷かれ、その回りに枯山水が配された和の空間 が広がっており、旬の素材を活かした料理への期待がふくらむ。 石畳の左側には7席ほどのカウンターとその奥に厨房、右側には4人掛けのテーブルが 8席とさらにその奥に20名くらいはゆったりと収容できそうな座敷が配置されている。 客は勤め帰りのカップルや職場のグループが主で、年齢層は高めである。 照明は適度な暗さで、和空間の雰囲気を盛り上げている。 料理を引き立てる銘酒の品揃えも自慢らしく、日本各地から厳選したものを取り寄せて いるそうだ。 さて、この日注文したのは次のとおり。 - しらすとざる豆腐のサラダ〜自家製青じそドレッシング〜 (¥960) - 秋の野菜の炊き合わせ (¥680) - 秋の幸と生ハムの味噌仕立てのピザ (¥860) - うどん明太子 温玉のせパスタ風 (¥780) まずサラダから食べてみよう・・う〜ん、自家製青じそドレッシングに惹かれたのだが、 残念ながら青じその風味があまり感じられない。 オリープオイルと和えるのが自家製と しての自慢なのであろうが、どうも青じそがオリーブオイルに負けているようだ。 さらにざる豆腐もイマイチ豆腐らしくない。 一瞬モッツァレラ・チーズかと思えるよう な食感であり、豆腐としての味も感じられない。 炊き合わせは、かつおと昆布でとったさっぱりしたダシに、茄子、里芋、いんげん、蕪、 蓮根、舞茸、栗などが炊き合わせてあり、それぞれの素材の味がよく出ている。 これなら「旬の素材を活かす」という看板に偽りなしだ。 ピザには秋の幸として、しめじ、生ハム、そら豆が入っているのだが、それら素材の味が 感じられず、唯一感じるのは味噌の甘い味。 試みは面白いが、まだまだ完成とは言えない だろう。 パスタ風のうどんは、明太子と半熟たまごを混ぜて、それをうどんに絡めて食べる。 まぁ想像通りの味であり、その辺のスナックでも作れそうな気がする。 けっして不味くは ないが、このような俗っぽい味は、こういう店にはあまり似合わないと思う。 たとえば山芋 などのもっと歯応えのある素材を加えるとか、あるいはうどんをニンニクで和え、素揚げした 茄子や蓮根などをトッピングして、うどんペペロンチーノとするとかの工夫が必要ではないか。 上記に飲み物(麗(日本酒ベースのカクテル)とバクラ(ノンアルコール・ビール))とお通しを 加え、合計¥5,795也。 以上を総合して、この店に対する私の評価は、残念ながらそれほど良くない(既に紹介した 「串べえず」や「土風炉」より下)。 店内の作りや雰囲気に対して、料理の味が追いついていない気がする。 近年、和食ダイニング・バーと呼ばれる形態の店があちこちで開店している。 それらいずれも、重たい料理より軽くて健康的イメージを与える料理、かしこまった雰囲気 よりカジュアルな雰囲気、居酒屋ほど雑然とはせずしかも会席よりリラックスできる、などの 共通したコンセプトを持ち、旬の素材を活かした創作料理と、それを引き立てる豊富な品揃え の銘酒を提供してくれる。 おしゃれな空間で、寿司、蕎麦、会席など、ジャンルを越えた料理を手軽に楽しむことができる のは、客にとっては嬉しいことではあるが、それにしても最近の流行りぐあいはどうだ。 どの店の料理もそこそこの味ではあるが、オリジナリティや主張を感じられるところは少ない。 結果として、どの店も似たような印象を受けるのは、私だけではあるまい。 ここの厨房におられる料理人の方々は、味の出し方などを見る限り、おそらく和食を専門とする 人が多いように感じるが、個性を主張できる味作りに関してはさらなる修行が必要だと思う。 和食にこだわる一方で、和食だけにとどまらない幅広い知識やスキルをフル稼働させてこそ、 オリジナリティに富んだ料理を創出できると思うからだ。 画像は、店への入り口(左)と店内の様子(右)。 料理についてはギャラリーを参照されたい。