中国にはさまざまな食のスタイルがあり、地方によって食材、味付け、調理法が異なる。 「中国3000年の歴史」などと言われるが、広大な土地もあり、その多様さは日本の比で はないだろう。 中国料理の系統については議論が盛んであり、四大系統説、八大系統説、十二大系統説など がある。 その中で広く認められているのは四大系統説である。 四大とは魯菜、川菜、蘇菜、粤菜であり、一言でいえばそれぞれ次のような特徴をもつ。 魯菜:選ばれた材料と精密な細工、調味は中ほどで、火の扱いが巧み 川菜:広範な材料と多様な調味、清鮮(あっさり)と濃厚さを兼ね備える 蘇菜:淡水魚、湖蟹、蔬菜を調理し、調味は精緻 粤菜:広範かつ変わった材料と清鮮として純粋で生き生きした調味 概念的にはそれぞれ今日でいう北京料理、四川料理、上海料理、広東料理に通じる。 萬珍樓は広東料理を提供してくれる創業明治25年の老舗である。 残念なことに2002年 に火事により焼失してしまったが、2003年4月にリニューアル・オープンとなり、今では 横浜中華街の顔とも言われている。 萬珍樓點心舗は飲茶(やむちゃ)スタイルを初めて中華街に紹介したことでも知られている。 言うまでもなかろうが、飲茶スタイルとは、お茶と一緒に小さな料理をいろいろ楽しむことを 指す。 また點心(点心)とは、小さなお皿や蒸篭(セイロ)のことである。 大人数で繰り出して萬珍樓(本店)でいろいろな料理を試すのも良いが、少人数なら萬珍樓點心舗 をお薦めする。 點心ものなら少人数でもいろいろ試すことができるからである。 さてと、皆もにわか中華料理通になったところで、そろそろ本題に移ろう。 メニューには各種コース料理、点心コース、お薦め料理、一品料理など100以上も並んでおり、 慣れないと注文するだけで難しい。 今回私が注文したのは次のとおり。 時菜炒牛肉(和牛と季節野菜の炒め)(小):¥1,700 鮮蝦焼売(海老シュウマイ):¥650 海鮮粥:¥1,200 ※(小)サイズは2〜3人の量、焼売は4個入り、粥も2〜3人分の量がある。 約1年振りにこの店に来てみると、なんと店内で三人の小姐(シャオチェ:若い女性)が何やら 楽器を演奏している。 曲は中国の伝統的なものから日本の歌謡曲まで、何でもありのようだ。 きっと、女子十二楽坊がヒットした影響だろう。 そうして、いい雰囲気に浸っていると、ほどなく料理が出てくる。 まずは時菜炒牛肉を一口。 XO醤で味付けされた柔らかい肉は、ほどよくニンニクが効いて、 なんともいえぬ旨味が口に広がる。 これだけで来た甲斐があるというもの。 昼飯と較べたら天国と地獄だ! 牛肉をニンニクと一緒に下味を漬けておき、チンゲンサイとグリーンベルト以外の野菜(人参、筍) と一緒に油通ししてから、葉野菜と一緒に炒め直していると思われる。 味付けはもちろんXO醤 だろう。 これで旨さが伝わるかな? ※グリーンベルトとは満州ニラの系統で、日光をあてずに栽培された黄ニラ、炒め物によく利用される。 鮮蝦焼売は余所では絶対に食べれない代物。 こりゃ絶品、崎陽軒なんて目じゃない。 海老、椎茸、クワイ(ユリ根みたいな根菜)、細かく刻んだ豚肉(つなぎ?)が入っていて、それらが 絶妙な味を醸しだしている。 シュウマイ自体の味付けには、干し海老と干しホタテの貝柱を戻した 時の汁を使っているようで、グルタミン酸の天然の旨味がよく滲み渡っている。 海鮮粥がまた美味い! ちょっぴり塩味の効いた粥の中にホタテ、白身魚、海老が入っている。 シンプルだが、具それぞれの味、食感も楽しめ、それでいて健康的となれば、もういうことなし!  好みに応じて、独特の香りがあるチャンツァイ(香菜)や生姜の千切りや白ネギの千切り、さらには 揚げた麸のようなものを粥にトッピングすれば、いくらでも食べれる。 朝食なんか、これで充分じゃないかな(事実、中国の人達の朝食は、こんなもの)。 具は、海老、ホタテの貝柱・白身魚(たぶん鱈)を油通しした後、再度熱湯(もしかしたら中華スープ) にくぐらせ、油抜きをしたと思われる。 最近ラーメンを食べる機会が多く、台風による豪雨の影響を受けた地盤のような状態だった(?) 私の胃腸も、これで通常の状態に戻るだろう。 我吃飽了(ウォー・ツー・パォ・ラー(ごちそうさま))。 医食同源を実感して、今宵も超満足。 上記に飲み物(鉄観音茶)を加えて、¥4,367也。 画像は海鮮粥(左)と時菜炒牛肉(右)をアップ。