どうも最近「当たり」の店に巡り合っていないので、このへんでなんとか挽回したい ものだ。 そうだ、今回は以前から気になっていた店に挑戦してみよう。 店の名は「ぎをん」といい、JR関内駅のすぐ近くに、今年になってオープンした ばかりの店だ。 「おばんざい」とは京の家庭料理のことであり「炙り」の枕詞から 炙り焼きを得意としていると思われる。 インターネットで調べてみると「都会から離れ『京都』を感じる空間の中で静かにゆっ くりと『おばんざい』を楽しむ」というコンセプトを掲げている。 伝統的な京料理をベースとし、四季折々の厳選された食材を日本各地から取り寄せ、 味・色・香り・器、全てに満足できる料理を提供してくれるという。 また酒は特選 地酒十種類以上、本格焼酎三十種類以上を随時取り揃えてあるそうだ。 事前に電話したところ、幸運にもたった今空いたというカウンター席を確保することが できた。 火曜日だというのに、それ以外は満席だという。 へぇ〜、人気なんだね。 店に入ると、ほんのりとした明かりの中で、着物姿のオネーサンが迎えてくれる。 店内には8人程度収容できる個室が3つと、6人が座れるカウンター席だけしかない、 こじんまりとした空間があたかも京都にいるかのような雰囲気を盛り上げる。 この日の客は、勤め帰りのカップルや職場のグループが主なようで、年齢層はそれなり に高めである。 場所柄からか、いつもこのようなものなのであろう。 カウンター席の前では、板長が食材を炙っている。 その手元を詳細に観察することは できないが、焼き上がったものを皿に盛りつける様子はよく見える。 そのどの料理も、また隣の客が食べている料理も、とても美味そうに見える。 板長が忙しそうに焼いている後ろの壁には、数本の竹が立ち、さらに天井から水が流れる という演出もあり、いい雰囲気だ。 奥の棚には織部焼き、清水焼きなどの器が並んでいる。 それらを見て寛ぎながら、料理が出るの待つ。 メニューに載っている料理はどれも美味しそうで、あれこれ考えながら選ぶのもまた楽しい。 しばらく悩んで、次のとおり注文した。 - おまかせ おばんざい 三種盛 (¥1,350) - 京豆腐と湯葉の冷し鉢 (¥650) - 霧島地鶏のもも肉 (¥1,300) - 殻付ホタテ焼 (¥780) - 天婦羅の盛り合わせ (¥1,300) - じゃこ飯 (¥650) - 豆乳シャーベット (¥600) 料理を待っている間に、カツオの炙り焼きがサービスで出される。 あっ、こりゃー美味いわ! これからの料理への期待がふくらむ。 ・・さぁ〜て、いよいよですよ〜・・ まずは、おばんざい三種盛。 三種の品は日によって変わるそうであるが、この日は、おから、 茄子の煮びたし、野菜の炊き合わせであった。 食べてみると・・おぉっ、こりゃ美味い! おからには一般的なもののようなモソモソ感がなく、きめが細かいので食べやすい。 ほのか〜な甘味とともに不思議な美味しさがある。 茄子の煮びたしも炊き合わせも、薄味の ダシがしっとりとした味を出しており、それがまた具本来の味を大いに引き立てている。 特に茄子の煮びたしが気に入った。 煮びたしとは、一旦焼いた茄子の皮を剥き、ダシ汁で さっと茹で、それを冷やすという、手の込んだものだ。 そりゃ美味いわなぁ〜。 京豆腐と湯葉、これが絶品。 豆腐にも湯葉も、それぞれの食感と持ち味をしっかりと主張 しながら、お互いを引き立て合っている。 そしてそのダシがまたいい。 たぶん溶き卵を 上手く使っているのであろう。 板長自らが焼いた地鶏のもも肉は素晴らしい。 カリカリした皮はもちろん、硬すぎず柔らか すぎず、よく引き締まった肉の味を損なうことのない焼き加減はさすが。 塩がついてくる のだが、それを付けるのが憚られるほど、素材そのものが美味しいのである。 付け合わせの しし唐と茄子の焼き物、クレソンもまたいい。 それだけでもいけるが、これには特製の練り モノを軽くつけて食べると、いっそう美味い。 特製の練りモノとは、この店のオリジナルで あろうが、たぶんしし唐か何かをベースにしたものと思われるが、そのシャープな辛さが気に 入った。 それら焼き物を合間として、もも肉を食べると、いくらでもいけそうだ。 大きな殻ごと炙ったホタテには、磯の香りがしみ込んで、これまたいい味を出している。 私はもともと磯の香りをあまり好きではないのだが、なぜかその香りたっぷりの焼き汁をつけ て食べたくなるほどである。 海老、アスパラ、キス、穴子、ベビーコーン、春菊、プチトマトの天婦羅の盛り合わせは、 特製の塩をつけて食べる。 特製とは、昆布と胡椒をよく砕いて天然塩に混ぜたものと思われ るが、軽く揚げられたそれぞれの食材の味をとてもよく引き出している。 じゃこ飯のじゃこは、炊き込む前にそれ自体に醤油で炒って味を付けてあるのであろう。 じゃこの味がしっかりと付いたご飯はとても美味しく、いくらでも食べられそうだ。 これだけ食べても、まだ胃に余裕がありそうだったため、豆乳で作ったシャーベットを食べて みた。 豆乳自体にはほのかな甘味しかないのに、それを冷たいシャーベットにしても、なお 甘味が感じられる。 黒密がかかっていて、それと絡めて食べれば、甘〜いデザートとなる。 ただ、黒密と豆乳の甘さの差が大きく、豆乳の甘さが負けてしまいそうなのが残念である。 黒密よりアンコの方が良いのではないだろうか。 あるいは、シャーベットもいいが、豆乳の プリンというのはどうだろう? 小豆をトッピングすれば、かなりいけると思われるのだが ・・今度提案してみよう。 いずれにしろ今回は、本当に久しぶりに美味い和食を食べた気がする。 店の雰囲気も味も今までにレポートした中で最高のポイントを与えることができると思う。 聞けば、全ての食材が無農薬栽培だという。 牛肉は宮城県産の国産和牛、豚肉は薩摩の黒豚。 それだけでなく、無農薬大豆を使った醤油、天然塩、天然アルカリイオン水などなど、とことん こだわっているそうである。 上記に飲み物(ウーロン茶と角玉梅酒)を加え、合計¥9,440也。 着物姿のオネーサンと聞いて行く気になった村○さんや佐○さんは、この値段を見てどうする のであろうか? 画像は、カウンター席から見た店内の様子(左)と霧島地鶏のもも肉(右)。 その他の料理についてはギャラリーを参照されたい。